たった一人の男が地球環境を大破壊?トマス・ミジリーの研究とは

昨今の環境問題は、地球に住む人すべての責任です。 しかし、地球環境に一番影響を与えた男と言われる人物が存在することをご存知でしょうか。 たった一人の人間が地球環境をどれだけ破壊できるのか、と思うかもしれませんが、その人物の経歴を知ると、確かに最も環境を破壊した男、と言えなくもないのです。
その人物の名前は、トマス・ミジリーと言いますが、なぜ彼は最も環境を破壊した人物と言われるのでしょうか。 トマス・ミジリーの生涯をご紹介します。
最も環境を破壊した男?トマス・ミジリー
トマス・ミジリー(Thomas Midgley)は、1889年5月18日にアメリカのペンシルベニア州で生まれました。 幼い頃はオハイオ州で過ごし、1911年にはコーネル大学で機械工学士を授与されて卒業します。
その後、ミジリーは自動車会社のゼネラルモーターズの子会社に勤務することになります。 発明家だった父の影響を受けたのか、ミジリーも研究開発の職に就いたのです。
そこで彼は、車に使用するガソリンについて、ある発見をします。 それによって、彼は最も環境を破壊した男として、第一歩を踏み出すことになりました。 1960年代に環境問題となった、有鉛ガソリンの発明…つまりはエチルを誕生させてしまったのです。
エチルの発見
当時、車のエンジンはノッキングと言われる、部品が弱ってしまう現象に悩まされていましたが、ミジリーはテトラエチル鉛を混ぜることで、この問題が解決することを発見します。 ノッキングを起こさないこのガソリンは、エチルと名付けられ、当時のエタノール燃料と入れ替わるようにして広く使われるようになりました。
しかし、エチルガソリンが量産された工場では、病人が続出し、さらに死者まで出してしまうことになります。 テトラエチル鉛によって、人々は鉛中毒になってしまったのです。 鉛中毒は幻覚症状や精神異常をきたし、死に至ることもあります。
ミジリーは記者会見で自らテトラエチル鉛を吸い込むなどして、その安全性を訴えましたが、最終的には工場は閉鎖となり、テトラエチル鉛の製造も州の許可が必要となりました。
有鉛ガソリンは1970年代まで広く使用されましたが、人体に有害であり、大気汚染の原因となることから、次第に無鉛化が進みます。 日本では1975年以降に完全無鉛化され、アメリカでは1995年に大気浄化法によって規制されましたが、その間ずっと有鉛ガソリンが大気を汚染し続けることになりました。
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フロンの発見
ミジリーはエチルガソリンを発明することで、大規模な環境破壊のきっかけを作ってしまいました。 しかし、彼の環境に影響する大きな発明は、これだけではなかったのです。
彼が発明した、環境破壊に深く関わりがあるもの、それはフロンでした。 1930年、ゼネラルモーターズは家庭用として使用する、安全で無害な冷媒の開発をミジリーに命じました。 ミジリーはクロロフルオロカーボンを発見し、フレオンと名付けます。 これが日本ではフロンとして知られる物質です。
ミジリーは記者会見で自らが開発したフロンを吸い込み、蝋燭を吹き消すことで安全性をアピールしました。 これにより、それまでヒートポンプや冷蔵庫で使用されていた有害で爆発の可能性がある物質は、フロンへ置き換えられるようになったのです。 夢の化学物質とまで言われたフロンでしたが、オゾン層を破壊する物質として、広く知られるようなるのです。
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トマス・ミジリーの最後
1944年、ミジリーはこの世を去ります。 彼は51歳のときに患った、急性灰白髄炎により後遺症がありました。 そのため、網とプーリーを使った仕掛けを作り出し、それを使ってベッドから起きていました。
しかし、55歳の時にその仕掛けに絡まって窒息死してしまったのです。 一説によると、落ち込んでいたミジリーが自殺したのでは、とも言われています。
世の中を便利にしようと、様々な発明をしたミジリーですが、結果的には環境破壊のきっかけを作ってしまいました。 多くの研究者が人々を喜ばせるために、様々な発明や研究を行ったことに違いありません。 それでも、ミジリーの発明のように環境を破壊してしまったものは少なくないでしょう。
人間にとって快適な環境を作ろうとする意志が、必ずしも自然にとって良いことではないと考えられます。 私たちは自然との付き合い方を考えながら、発展の形を変えていく必要があるのかもしれません。
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