酸性雨とは?発生の原因と影響から対策の取り組みを解説

酸性雨とは?発生の原因と影響から対策の取り組みを解説

酸性雨という言葉を聞いたことがない、という人は少ないのではないでしょうか。 酸性雨は、その名の通り酸性の雨が降り注ぎ、多くの被害をもたらすのが、恐ろしい環境問題の一つです。

酸性雨は硫黄が化学反応を起こしたことが原因で発生します。 硫黄は地球上を循環する元素ですが、もとは酸性雨として大気中に放出されることはありませんでした。 これも人間が自然に悪影響を与えてしまった環境問題の1つなのです。

この酸性雨は何が原因で発生し、自然や人にどのような影響を与えているのでしょうか。 また、酸性雨に対して、どのような対策が取り組まれているのでしょうか。 酸性雨について考えてみましょう。

酸性雨とは?原因は人間による影響か

どうして、地球に酸性雨は降るようになったのでしょうか。 酸性雨が降るようになった経緯や仕組みをご紹介します。

酸性雨とは

そもそも酸性雨とは何か、という点からおさらいしてみましょう。 酸性雨とは二酸化硫黄(SO2)や窒素酸化物(NOx)といった酸性物質が雨に溶け込み、強い酸性となってしまう現象です。

通常の雨も酸性に分類されますが、酸性雨は液体がアルカリ性か酸性かを示すpH(ペーハー)値によって判断されます。 pH値は低ければ酸性、高ければアルカリ性を意味し、中性と言われる数値は7pH。 通常の雨の場合は、5.6pH。酸性雨の場合は5.6pH以下となります。

つまり、酸性度が高いものが酸性雨と呼ばれることになりますが、これはさまざまな悪影響をもたらすのです。

硫黄循環

酸性雨は硫黄によって作り出されます。 この硫黄はもとから自然の中に存在するもので、大昔から地球を循環する元素です。

硫黄の主な発生場所は海や火山です。 まず、海の場合はジメチルスルフィド(DMS)と言われる含硫化合物が、藻類の活動によって大気中に放出されます。 これが硫酸や硫酸塩、メタンスルホン酸となりますが、ほとんどは海に戻っていきます。

火山の場合は噴火により、大量に硫黄化合物が放出されますが、これは大気中か生態系の中で硫酸や硫酸塩に変換されて、土壌や海へと戻されます。 この硫黄の流れを硫黄循環と言い、地球上の自然な流れでした。

人間が硫黄循環に影響を与えた

産業革命後、自然の硫黄循環とは別の流れを人間が生み出してしまいました。 人間が化石燃料を使うことで、石炭や石油に含まれた硫黄が、SOx(ソックス)と言われる硫黄酸化物(SO2:二酸化硫黄やSO3:三酸化硫黄)となります。 この硫黄酸化物や窒素酸化物が大気中に増加したことで、酸性雨などの問題が引き起こされたのです。

関連記事

酸性雨の原因は大気汚染による影響が強い

酸性雨は人間による大気汚染が原因です。 工場や火力発電、自動車によって燃焼した石油や石炭が、硫黄酸化物や窒素酸化物を生み出し、雨に溶け込むことで酸性雨となります。

これは産業革命以降に、火力の強い燃料が必要となったことがきっかけでした。 霧の強いロンドンでは、霧に硫黄酸化物が溶け込んだことで、「ロンドンスモッグ事件」と言われる大きな被害が起きました。

また、中国では高速経済成長を遂げる反面、硫黄酸化物や窒素酸化物の排出により大気汚染の問題が騒がれています。 中国の家庭では硫黄分の多い石炭を使うことが多く、硫黄酸化物の排出量は極めて多いため、酸性雨の被害が拡大しています。

関連記事

酸性雨が原因となる環境への影響

酸性雨による悪影響は自然や動物、人間にも及びます。

森林への悪影響

酸性雨が森林に降った場合、木々が枯れて土壌が汚染されてしまう恐れがあります。 その影響で砂漠化し、そこに生息していた生物も死に至ります。 酸性雨で被害を受けた、ドイツの「黒い森」が有名です。

地下水への悪影響

地下水に酸性雨が流れ込んでしまうと、人が飲む水にまで悪影響を及ぼします。 酸性雨によって汚染された水を飲んだ場合、病気の原因となる恐れがあります。

海や湖への悪影響

酸性雨が降ったことで、海や湖に生息する生物が死滅してしまいます。 海では有害のプランクトンの発生にも原因となり、海洋生物が死滅する恐れがあります。 また、人間が食べる魚も汚染される恐れがあり、それを食べてしまうことで人間も病気になってしまうでしょう。

建造物への悪影響

酸性雨はコンクリートや大理石まで溶かします。 歴史的価値のある建造物や彫刻、銅像に錆びを発生させる恐れもあります。

人の健康への悪影響

酸性雨によって、髪の色が緑色に変色することや、目や喉に悪影響が及びます。 また、酸性雨によって海や川にアルミニウムが混ざり、人間の体に蓄積されるとアルツハイマーの原因にもなると言われています。

酸性雨の対策として取り組まれる条約・枠組み

酸性雨による被害がこれ以上、拡大されることがないように、様々な取り組みが行われています。

長距離越境大気汚染条約

硫黄の排出防止策や酸性雨の研究、モニタリングの実地や国際協力など、加盟国に大気汚染に関する政策を求めた長距離越境大気汚染条約が、国連欧州経済委員会(UNECE)によって、1979年に採択、1983年に発効されています。

ヘルシンキ議定書

長距離越境大気汚染条約に基づいて、国連欧州経済委員会に属する21か国が、硫黄の排出量を軽減することを署名したヘルシンキ議定書。 これは1993年までに1980年時点の排出量の30%に削減することを目標としたもので、1994年には国別で削減目標量を規定したオスロー議定書に置き換えられています。

ソフィア議定書

ソフィア議定書は長距離越境大気汚染条約に基づいた窒素酸化物削減に関する議定書で、1988年に採択され、1991年に発効されています。

東アジア酸性雨モニタリングネットワーク

東アジア酸性雨モニタリングネットワークは日本が酸性雨の問題に対して、共通の手法で状況を調査し、対策の協力を推進するために、東アジアで作った枠組みです。 13ヵ国が加盟し、47の地点で酸性雨に関する観測が行われています。

酸性雨の他にも環境問題について調べてみましょう

ここでご紹介した他にも、酸性雨による多くの被害が存在します。 一人一人にできることは限られていますが、少しずつ環境問題への意識を深めることで、大きな問題の解決につながる可能性もあります。

酸性雨の他にも多くの環境問題は存在します。ぜひ、多くを知って自分に何ができるのか考えてみてください。

関連記事

あわせて読みたい

関連タグ

カテゴリー

人気の記事

  • 先月
  • 全て

人気のタグ

おすすめの記事

スペシャルコンテンツ

関連リンク