ションブルグジカとは?立派な角が絶滅の原因に【絶滅動物シリーズ】
クリスマスと言ったらトナカイですが、今回はトナカイによく似たシカのお話です。
その名もションブルグジカと言い、立派な角を持つシカでしたが、既に絶滅しています。
ションブルグジカは様々な原因があって絶滅してしまったのですが、自らの角によって絶滅を早める結果となってしまいました。
シカもトナカイも、立派な角を持っていますが、なぜこの角が絶滅の原因を作ってしまったのでしょうか。
ションブルグジカの絶滅までをご紹介します。
※写真はイメージとなり、実際の動物と異なる場合があります。
ションブルグジカとは
ションブルグジカは鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)シカ科に属するシカで、タイ南西部に生息していました。
名前の由来はドイツの動物コレクターであるハンス・ションブルグからです。
ションブルグジカは湿地帯を好み、チョコレート色の体が特徴的ですが、何よりも目立つ特徴は、やはりその角です。
現在、シカ類の中で最も角の枝が多いのが、このションブルグジカです。
普通の個体でも、角が20本に分かれ、最大では33本の角に分かれていたそうです。
長さも70cm以上の個体もいるため、ションブルグジカは立派な角を持っていたことが分かります。
ションブルグジカは植物を食べますが、水生植物も食べます。
この特性から、水の中は安全と判断していたのか、ヒョウやトラに追われると、水中に逃げ込む習性がありました。
ションブルグジカの絶滅経緯
ションブルグジカは20世紀に入ってから、絶滅寸前の状態が続き、タイの南西部にあるパクナンポーで、最後の群れが生息していました。
なぜ、ションブルグジカがこの頃から絶滅寸前まで追い詰められていたかと言うと、やはりその立派な角が原因でした。
ハンターたちにとって、ションブルグジカの角は、立派な鹿角トロフィーになると考えられていたのです。
そのためションブルグジカは、ハンターたちによって追い詰められてしまいます。
ハンターたちは、ションブルグジカの習性を利用して、効率よく狩りを行いました。
その方法は、ションブルグジカを水深の深い場所へ誘導することでした。
ションブルグジカは危険を感じると、捕食者たちは水の中までは追いかけてこないと考え、水がある方へと逃げて行きます。
ハンターに追われたときも、ションブルグジカは同じ方法で危険から逃げようとしたのです。
しかし、ハンターたちはヒョウやシカとは違い、水の中だろうが執拗に追うことができました。
ハンターは、水牛の背に乗ったり、ボートに乗ったりすることで、水中だろうがションブルグジカを追いかけたのです。
どんなに敏捷なシカであったとしても、水深があるところでは、素早く逃げることはできません。
こうして、ションブルグジカは個体数を減らされてしまいました。
ションブルグジカが絶滅した原因は、これだけではありません。
ションブルグジカが生息していた湿地帯が、減少してしまったことも原因の一つでした。
なぜ、湿地帯が減ってしまったのかと言えば、人口の増加により湿地帯が水田として開発されたからです。
これにより、ションブルグジカは住む場所を奪われてしまったのです。
行き場を失ったションブルグジカ
ションブルグジカは住処を追われ、自分たちにとっては慣れていない森で住むことを試しました。
しかし、そこはションブルグジカにとって、決して住みやすい場所ではありませんでした。
ションブルグジカが森に住むためには、ある条件をクリアする必要があったのです。
それは低木が少ないことでした。
ションブルグジカはその大きな角があるため、低木が多いと行動が制限され、藪のような障害物を通り抜けられなかったのです。
そんな生活が困難な場所でも、ハンターたちはションブルグジカを狙ってやってきました。
住み慣れない土地で暮らすションブルグジカは、為す術もなく、1931年に絶滅することになります。
絶滅については、ベルリンの動物園で1938年に最後の一頭が死んだという説や、1935年に絶滅した、という説もあります。
住みやすい環境が大事
このように、動物はちょっとした環境の変化だったとしても、その種を存続できないことがあります。
人間は土地を変え、自然を歪めることで、自分たちが住みやすい環境に変えることで、順応することができます。
しかし、自然を歪めることで生態系が劇的に変化し、人間も住めないほどに環境悪化が進むことも考えられます。
ションブルグジカのような生き物をこれ以上増やさないためにも、人という種をこれからも残すためにも、私たちは環境に配慮した生活を心がける必要があるでしょう。