マングースが根絶へ?ハブ対策で導入のはずが外来種に
マングースと言えば、かつては沖縄の観光名物の1つとも言える存在でした。 しかし、実はマングースによって生態系が乱れるケースは多く、日本では特定外来種に指定されている動物でもあります。
そんなマングースはどんな経緯で日本にやってきてしまったのでしょうか。 今回はマングースの生態から、日本にやってきた理由、根絶までの道のりをご紹介します。
悲劇の特定外来生物?マングースとは
マングースは食肉目に属する哺乳類で、細長い胴体と尻尾が特徴です。 マングース科に属する種は多く、ヌママングースやシママングース、コビトマングースなど。 動物園の展示でよく見られるミーアキャットも、実はマングース科に属しています。
ちなみに、日本で外来種として定着したマングースは「フイリマングース」です。 こちらは、中国南部やネパール、インド、アフガニスタンなどが原産地で、外来種としては日本だけでなく、ハワイ、フィジー、プエルトリコなどに分布しています。
フイリマングースの頭胴長は25~37センチで、体重は0.3~1キログラム。 農地や自然林、湿地、都市といった開放的な環境を好み、雑食性で哺乳類から鳥類、昆虫、爬虫類、果実まで何でも食します。 水が苦手なのか、水深5センチ以上の水には積極的に入ろうとしない、という特徴もありますが、そんなマングースがなぜ日本にやってきたのでしょうか。
マングースはなぜ日本にやってきたのか
フイリマングースは、1870年代から大規模なサトウキビ農園の害獣となるネズミ類を駆除し、毒蛇の天敵になると注目されていたため、世界各地の島々で導入されていました。
当時、沖縄でも重要な収入源であるサトウキビ畑に侵入してくるネズミによる被害と、農作業中の人々の命を奪う恐れがあったハブに頭を悩ませていたため、動物学の権威であった東京大学の渡瀬庄三郎名誉教授の勧めもあり、ガンジス川河口付近で捕獲されたフイリマングースたちが、1910年に那覇市と西原町で放たれます。
さらに、1979年には鹿児島県にある奄美大島にフイリマングースが導入されるのですが……。
1980年代に入り、研究者がフイリマングースの胃内容物や糞を分析したところ、ハブを食べている個体はほとんどいないことが判明しました。 しかも、沖縄ではオキナワキノボリトカゲやヤンバルクイナ、奄美ではアマミトゲネズミやアマミノクロウサギなど、島固有の希少な在来種が犠牲になっていることまで判明してしまいます。
実はこのマングース、昼行性であって夜行性のハブとは遭遇する機会がほとんどなかったのだとか。 そして、マングースは雑食性。ハブのように危険な動物を獲物にする必要はなく、もっと簡単に食べられる動物を狙うのは当然のことだったと言えるでしょう。
こうして、フイリマングースは2005年に特定外来生物に指定されてしまうのでした。
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奄美大島のマングースが根絶される?
マングースの対策は、1993年に鹿児島県の名瀬市(現・奄美市)が駆除を始めたことが皮切りだったと言われています。
1996年には鹿児島県と環境庁(現・環境省)が「島嶼地域の移入種駆除・制御モデル事業」としてマングースの生態や分布状況の調査を開始。 これが外来種対策を検討する日本初の試みだった、と言われています。
最初はマングースを捕獲した人へ自治体や県から報奨金が支払われる仕組みでしたが、一向に増加を防ぐことはできず、科学的な知見による防除計画の必要性が出てきました。 結果、2005年の特定外来生物の指定と同時に、沖縄本島と奄美大島の両地域で「マングースバスターズ」が結成。 生け捕り式の箱罠と捕殺式の筒罠を大量に投入されます。
さらに、マングース探索犬も導入され、当初は3,000を超えた捕獲数も次第に減少。 奄美黄島では2018年4月を最後に捕獲が途絶え、カメラトラップや探索犬によるモニタリングを行っても生存情報がなかったため、2024年9月に根絶が宣言されました。
そして、奄美野生生物保護センターはマングースの根絶によって、在来種は回復を遂げ、本来の姿を取り戻しつつあると報告しています。
参考:奄美野生生物保護センター マングースの根絶について
マングース問題の元凶はどこにある?
こうして、在来種に被害を及ぼしていた奄美黄島のマングースたちは根絶されましたが、もとをたどれば原因は人間にあったと言えるでしょう。 マングースだけでなく、外来種の問題は人間の無責任な行動が関係していることがほとんどです。 生態系は微妙なバランスで保たれているため、軽い気持ちによる行動が大きな悲劇を生んでしまうこともあります。
また、ときに外来種はそこに住む人々を脅かす存在になり、駆除が必要となってしまいます。 これ以上、マングースたちのような悲劇を生まないよう、動物や自然と関わるときは、細心の注意を払いましょう。
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