SAFとは？持続可能な航空燃料のメリットや課題を解説

ecotopia編集部
2025年12月31日

私たちは文明の発達によってさまざまな移動手段を手に入れてきました。中でも飛行機は長い距離を短時間で移動できるため、なくてはならない存在と言えますが、航空燃料の使用は多くの二酸化炭素を排出するため、環境に大きな負荷をかけていると指摘されています。

しかし、持続可能な航空燃料として「SAF」という技術が注目されていることをご存じでしょうか。今回はSAFの特徴やメリット、課題などをご紹介します。

SAFとは？環境的な重要性とメリット

航空燃料として注目されているSAFとは、どういった特徴があるのでしょうか。重要性やメリットも一緒にご紹介します。

SAFとは

SAFとは「Sustainable Aviation Fuel」の略で、日本語では「持続可能な航空燃料」と訳されます。これまで、航空機で使われるジェット燃料は化石由来の燃料が使われていましたが、2000年代後半から2010年代初頭にSAFの導入が進められ、脱炭素化に向けた有効な手段として注目されました。

現在の航空機、燃料タンクや配管といったインフラを変更することなく、従来のジェット燃料に混ぜて使用できるため、世界的に導入が進められています。

SAFの重要性とメリット

SAFの重要性は航空業界の脱炭素化に有効な手段と言われています。飛行機から排出される二酸化炭素は非常に多く、欧州では空の旅をやめようという動きが広まっているほどです。

しかし、SAFは従来のジェット燃料に比べて、ライフサイクル全体で最大80%程度の二酸化炭素排出削減が可能と言われています。さらに、現在のジェット燃料と特性が非常に似ているため、大規模な設備投資や機体の改修も不要である、という大きなメリットも注目されているポイントです。

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SAFの原料は？製造の工程

SAFの原料は、廃食油やバイオマスが一般的です。それぞれの工程や安全性について解説します。

油脂系原料

SAFの製造で最も広く利用されている原料が、廃食油や動物性脂肪などの油脂系原料です廃食油は飲食店や家庭から出る使用済の植物油。動物性脂肪は牛脂や豚脂といった獣脂となります。これらをHEFAと呼ばれる、脱炭素化および水素化処理をする方法でSAFが製造されます。

廃棄物

利用価値の低い廃棄物をSAFの原料にするケースもあります。 SAFの原料になる廃棄物は、可燃ごみや廃プラスチック、古紙など。これらを燃料にするため、FT合成といった技術が使われます。

FT合成はバイオマスや廃棄物を高温高圧下で処理し、主に一酸化炭素と水素からなる合成ガスを生成。さらにコバルトや鉄といった触媒が入った反応装置によって、合成ワックスに変えた後、水素を加えて特殊な熱処理などを行い、燃料化します。

バイオマス

食物と競合しない資源もSAFの原料として使われます。例えば、稲わらや製材廃材、木くずと言った農業・林業で発生する不要な有機物。他にも培養することで油脂や糖質を生成できる藻類などバイオマスは、将来の有望な原料として注目されています。

これらを燃料に変える「ATJ(Alcohol-to-Jet)」はバイオマスを発酵させて作られたバイオエタノールや合成ガスから作られたアルコールを活用する技術です。製造過程としては、アルコールを高温で処理してオレフィンという炭化水素に変化させた後、分子を触媒の力で統合させ、より炭素数の多い分子へ成長。さらに水素を添加し、飽和炭化水素へ変換することで、燃料として利用可能となります。

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安全性

SAFは従来のジェット燃料と同等の安全性が確保され、既存の航空機でも問題なく使用できるよう認証を得る必要があります。国際的な標準化団体であるASTM International(米国材料試験協会)が定める厳格な規格「ASTM D7566」などを満たさなければ、既存の燃料タンクに投入できる「ドロップイン」特性が認められません。

他にも引火点や氷点、熱安全性のチェックなど、従来のジェット燃料と同じか、それ以上の性能を示さなければ利用できないのです。

SAFの課題とは？

多くのメリットと安全性に優れたSAFですが、課題がないわけではありません。 SAFの課題は以下のようなものがあげられます。

高コスト
供給量が不安定
持続可能性の認証が困難

まずは製造コストが非常に高い点です。 SAFの製造プロセスは従来の石油精製に比べて複雑で、水素処理に必要なコストも発生します。原料についても調達コストが発生してしまい、現在のSAFの価格は従来のジェット燃料の数倍という状況です。

そのため、航空燃料需要全体から見ると圧倒的に不足し、大規模な供給体制の確立も必要とされています。他にも持続可能性の基準、例えば「食料生産と競合しない」「原料採取による森林破壊を防ぐ」といった側面も簡単にクリアできるものではありません。これらの課題を解決しない限り、SAFが航空燃料として広く利用される日は、まだ遠い未来と言えるでしょう。