オゾン層破壊のメカニズムとは?フロン削減の必要性

オゾン層破壊のメカニズムとは?フロン削減の必要性

太陽から地球に降り注ぐ有害な紫外線を吸収することで、地球の生態系を守っているオゾン層。 このオゾン層の破壊についても、環境問題として多くの人が知っていることでしょう。

そして、オゾン層の破壊とフロンと言われる物質が関係していることも有名です。 かつては「夢の化学物質」とまで言われたフロンが、どのようにしてオゾン層を破壊しているのでしょうか。 オゾン層とフロンの関係を解説します。

オゾン層を破壊するフロン それぞれの役割とは

関係性が強いオゾン層とフロンガスですが、もともとはどういった役割があったのでしょうか。

オゾン層とは

オゾン層とは、地球の成層圏に存在する、大気中のオゾンの濃度が高い部分を言います。 1839年、スイスの科学者であるクリスチアン・シェーンバイン(Christian Schonbein)によってオゾンが発見され、その後にオゾンと紫外線との関係が注目されます。

1913年にはオゾン層の存在が発見され、1920年に科学的な計測によって、その存在が証明されました。 オゾン層は太陽からの有害な紫外線を吸収する役割があり、その有害な紫外線は皮膚の炎症や皮膚がんの原因となるものも含まれているため、地球に住む生物にとって重要なものです。

もともとオゾン層は地球上で生成と分解のバランスが取れていましたが、1970年代頃にフロンを代表とする化学物質によって、分解されていることが発見されます。 人間の活動によるオゾン層の破壊が生態系の破壊や気候変動に影響する環境問題として、広く認識されていったのです。

フロンとは

フロンは炭素や水素、フッ素や塩素などハロゲンを含む化学物質のことを言います。 家庭用の冷蔵庫の冷媒として開発されたのが、フロン登場のきっかけでした。

1928年、冷蔵庫メーカーを子会社としていた、アメリカのゼネラルモーターズ社は、フロンの開発に成功します。 人体に無害で、分解性が低く、蒸発しやすい、引火性のない扱いやすい物質であったため、フロンは「夢の化学物質」とまで言われていました。 そのため、急激に生産量が増加し、多くの人の生活を支えるために、広範囲で使用されることになりました。

しかし、それが大きな環境問題を生み出す結果となってしまったのです。

オゾン層を破壊するフロンの危険性

1974年、アメリカの大気化学者であるフランク・シャーウッド・ローランド(Frank Sherwood Rowland)とマリオ・モリーナ(Mario Molina)によって、塩素原子がオゾンを分解していることが指摘され、フロンがオゾン層に与える影響が知られることになります。 そして、1985年にオゾンホールが発見されます。

オゾンの濃度が激変したことで、オゾン層に穴が空いたように見えることから、オゾンホールと呼ばれるようになりました。 これは毎年春(南極の春季のため9月~10月)になると、南極上空のオゾンが減少していることを指摘した論文が発表された後、人工衛星による解析映像が発表されたことで、多くの人に認識されます。

オゾン層の破壊は生態系や人体に大きな影響を与えるため、国際的にフロンを削減する必要性が唱えられました。

フロンはどのようにオゾン層を破壊するのか

それでは、フロンはどのようにしてオゾン層を破壊しているのでしょうか。 フロンは安定した化学物質であるため、分解されることなく、成層圏まで到達します。

また、オゾンは一酸化窒素や塩素原子によって分解されます。 フロンはこの塩素原子を放出させることで、オゾン層を破壊してしまうのです。 その経緯を南極のオゾンホール発生を例にして解説します。

冬季の南極では、成層圏の上空に氷の粒で作られた極域成層圏雲が発生します。 フロンからできた塩素原子がこの極域成層圏雲に集積され、塩素化合物となります。 これが春になると、極域成層圏雲が溶けて、塩素化合物が成層圏に放たれます。

そして、太陽の光によって分解された塩素化合物が、塩素原子となってオゾンを分解するのです。 こういった経緯から南極では春季にオゾンホールが発生してしまうのです。 南極のオゾンホールによる影響はオーストラリアやニュージーランドまで広がることがあります。

オゾン層の回復とフロン削減

オゾンホールが発見されてから、世界的にフロンを削減する活動や条約が作られました。 まずは、1985年のウィーン条約です。 こちらの条約ではオゾン層破壊による影響から環境を守るための措置をとることや、研究や組織的な観測を行うことなどが規定されています。

1987年にはモントリオール議定書が採択され、フロンを始めとするオゾン層を破壊する恐れのある物質の製造や貿易を規制することが定められています。 他にも、先進国では1996年までにフロンの使用を全廃、開発途上国は2015年までに全廃することが決まりました。 1988年にもオゾン層保護法が制定され、フロンの製造を規制、排出の抑制や代替物質の開発が進められました。

また、過去にフロンを使用した冷蔵庫やエアコン、カーエアコンなどは、家電リサイクル法や自動車リサイクル法によって、適切な対策が進められています。 これらの成果によって、1997年にはオゾン層が回復傾向にあることが分かりました。 そして、2050年から2070年頃には南極上空のオゾンホールも消失すると予想されています。 ただ、フロンなどの物質が想定以上に使われた場合は、回復がさらに遅くなることが考えられます。

このように、オゾン層破壊の問題は対策が取られていますが、まだ完全に解決したとは言えません。 私たちは冷蔵庫やエアコンを処分する際は、必ずルールに従って処分する必要があるでしょう。 もし、フロンが使われている冷蔵庫やエアコンを使用している場合は、注意してみてください。

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