冷夏とは?定義や原因と不作など考えられる影響をご紹介
2022年1月15日、トンガ火山の噴火により、日本でも津波の影響が懸念されました。 しかし、噴火によって懸念される点は、それだけでなく、今後訪れるかもしれない「冷夏」である、とも言われています。
冷夏による影響とは、どのようなものが考えられるのでしょうか。 また、冷夏の原因や過去の事例などもご紹介します。
目次
冷夏とは?定義や懸念される影響とは
冷夏(れいか)とは、平年に比べると気温の低い夏のことを言います。 比較的に気温が低い、といっても定義はあるのでしょうか。また、冷夏による影響も確認してみましょう。
冷夏の定義
冷夏の定義は気象庁による3段階表現の1つで、6~8月の平均気温が低いと判断されたときに該当します。 3段階表現は、平年より暑さが厳しい「暑夏」、平年並みの「並夏」、平年より涼しい「冷夏」です。 地域平均気温の平年差は以下の通りになります(1981~2010年の平年値による)。
- 北日本 -0.6℃以下
- 東日本 -0.5℃以下
- 西日本 -0.2℃以下
- 南西諸島 -0.3℃以下
冷夏による影響
冷夏の影響は農作物の生産に強く表れる、と言われています。 農産物の不足や価格高騰。過去には飢饉が起こった例も。 特に北海道や東北地方は低温の度合いが関東以西より大きいこともあり、農業関係者以外からも、恐れられています。 また、日本における夏の行事や生活習慣は、梅雨明けの晴天を前提にしていることから、冷夏がそれらの支障になることもあり、衣料品の売上が減少することもあります。
デメリットだけでなく、冷夏によって熱中症、日射病、食中毒 のような夏の暑さによる健康障害が減少する、という影響もあります。さらに、映画興行のような夏のインドアレジャーにとっても追い風となります。
冷夏の原因?どんな影響を受けて起こるのか
冷夏となる原因はいくつか考えられます。日本で起こる冷夏や世界で起こる冷夏など、それぞれの原因をご紹介します。
日本の冷夏
日本の冷夏は、2つのタイプがあります。 1つはオホーツク海方面に高気圧が現れ、その影響で北日本に「やませ」と言われる北東風が吹き込んでくるものです。1993年と2003年に、この現象が見られました。 もう1つは、北日本に低気圧が通過することで、日照不足と大陸から北西風が流れ込むパターンで、1998年はこの現象で北日本のみ、冷夏となりました。
エルニーニョ現象
世界規模で異常気象を引き起こす、エルニーニョ現象。 これが発生した年は冷夏の傾向にある、と言われています。 その例としては、1951年、1953年、1965年、1972年、1983年、1993年、2009年などが挙げられます。
ただ、1954年や1970年、1988年は猛暑になりやすいラニーニャ現象が起こったとしても冷夏になったこともあり、その逆に1992年、1997年、2002年のようにエルニーニョ現象が起こっても猛暑になったケースもあります。
太陽の黒点活動
太陽の黒点活動の周期が冷夏の発生と関係している、という説もあります。 2009年は冷夏となりましたが、太陽の黒点の数が、1913年以来の少なさを記録していました。 しかし、翌年の2010年も同じ状況が続いたにかかわらず、観測史上1位の猛暑となり、必ずしも一致しないとも言われています。
火山噴火
もう1つが、火山噴火によって放出された大量のエアロゾルにより、太陽放射を抑制する日傘効果で冷夏となるケースです。 1782年、江戸時代で起こった天明の大飢饉はアイスランドの火山噴火、1993年の米不足をもたらした記録的な冷夏もフィリピンのピナツボ火山噴火も、太陽放射を遮ったことで冷夏となった、と言われています。
1994年以降、日本で冷夏が激減している理由は、ナツボ山以来は大規模な噴火が起きていないため、という意見もあります。
過去の冷夏とその影響
過去に起こった冷夏は、人々の生活にどのような影響を与えたのでしょうか。冷夏の事例をご紹介します。
1976年
四国、九州、沖縄などは梅雨明けが平年より遅かったものの、他の地域は平年日前後でした。 しかし、出梅後も太平洋高気圧の勢力が弱く、梅雨期から勢力が強かったオホーツク海高気圧が長く存在した影響で、全国的な冷夏に。
夏の平均気温は北、東、西日本で平年を1度前後下回ることになります。 9月も低温と長雨の傾向が続いたことで、全国的な農作物の不作に見舞われました。
1988年
この年はラニーニャ現象が起こったにも関わらず、冷夏となりました。 7月に入るとオホーツク海高気圧の勢力が強く、北海道から中国地方にかけて低温に。 北日本や関東地方は、平年を2~4度以上下回るほどでした。
さらに、8月に入るとオホーツク海高気圧の勢力が弱ったものの、太平洋高気圧の勢力も弱いままで、熱帯低気圧が発生しやすく、曇りや雨、雷雨の日が多くなります。 米や夏野菜の不足は見られませんでしたが、農作物不作による減収、海水浴場の観光客減少といった影響がありました。
1991年
北陸地方と東北地方北部を除くと、梅雨明けは平年並みでしたが、8月上旬からオホーツク海高気圧による梅雨前線が東北地方から本州南岸まで南下。 これにより、南西諸島を除いて曇雨天と低温に見舞われます。
北陸・東北北部の出梅が、8月14日頃と大幅に遅れ、大分・宮崎県へ台風が上陸し、西日本を中心に水害が相次ぎました。 さらに、9圧中旬も秋雨前線が活発化し、9月28日の台風第19号により、関東地方も豪雨災害に見舞われ、各地の道路が浸水状態となりました。
1993年
この年は、冷夏による影響が顕著であり、後に「1993年米騒動」と言われる、大変な米不足に陥りました。 これは1991年6月に、フィリピンのピナツボ山の噴火が原因で冷夏となった、と考えられています。
夏の気温は平年より2~3度以上も下回り、日本で栽培されていたイネが記録的な生育不良に。 卸売業者まで米の確保に奔走し、小売店から米が消失します。 普段は扱わない業者が、消費者の関心を集めるために米を仕入れて販売すると言った、混乱状態が発生しました。
2009年
2004~2008年は猛暑が続き、2010年~2012年は暑夏だったため、2009年は冷夏のイメージが持たれました。 梅雨明けが遅く日照時間も短かった上に、残暑も厳しさはなく、冷夏になりやすいエルニーニョ現象も発生しています。 8月に入っても熱帯夜の日数は比較的に少なく、おでんの発売開始が前倒しになるといった影響もありました。