ごみを燃やさない方法は?脱焼却目指す「固形燃料」化の行方(上)

ごみを燃やさない方法は?脱焼却目指す「固形燃料」化の行方(上)
紀北町のRDF製造施設の全景
杉本裕明氏撮影 転載禁止

マイクロプラスチックによる海洋汚染問題への関心の高まりによって、プラスチックごみを含むごみ焼却の是非が改めて注目されています。昨年、プラスチック資源循環促進法が施行され、レジ袋の無料配布が禁止されるなど、使い捨てプラスチックの削減の取り組みが進みつつあります。

ただ、一方では、プラスチックごみの多くが可燃ごみとして燃やされ、大量のCO2が排出されていることも事実です。かつて国は、家庭からの可燃ごみを固めて固形燃料化(RDF化)を進めていました。しかし、いま、RDFを製造してきた自治体は、「受け入れ先が見つからない」「コストが高い」といった理由で製造をやめ、ごみ焼却に戻る傾向が出ています。一方で、北海道のニセコ町のように、RDF製造を守り続けているところや、香川県三豊市のように可燃ごみをリサイクル業者に委託、有機物を発酵させて蒸発させたあと、残ったプラスチックごみや木屑から固形燃料のRPFの原料を製造する試みもあります。現地を訪ねて見ました。

ジャーナリスト 杉本裕明



RDF、RPFとは

RDFはRefuse Derived Fuelの略称で、いわゆる可燃ごみを乾燥させ、固めて葉巻のような形の固形燃料にしたものだ。もう一つのRPFは、Refuse Paper&Plastic Fuelの略称で、プラスチックごみと紙ごみを固めてRDFより大きな円筒形に固めた固形燃料のことを指す。

日本では、RDFはもっぱら、大きな焼却施設をもてない小規模の小さな規模の自治体が、家庭から集めた可燃ごみから製造、燃料に使ったりしている。

一方、RPFは、民間業者が、産業廃棄物のプラスチックごみと紙ごみを事業者や廃棄物処理業者から有価で購入して製造する。製紙工場などのボイラーの燃料として販売されている。

完成したRDF
杉本裕明氏撮影 転載禁止

RPFは、材料リサイクルするには品質が劣り、これまで燃やすしかないプラスチックごみや、ミックスペーパーや汚れた紙など再生しにくい紙ごみを有効利用できる。さらに石炭ボイラーの石炭の代替になることから、CO2の発生量を大幅に削減できる。RDFも同様に可燃ごみを焼却せず、固めて燃料として使えるメリットがある。

生ごみ乾燥に大量の灯油使用

ただ、RDFは家庭ごみの半分近くを占める生ごみを含むので、乾燥させねばならない。直径3~5センチ、長さ5~15センチのRDFの製造には大量の灯油などの燃料を必要とする。カロリーは3,000~4,500キロカロリー程度。石炭の6,000キロカロリー、RPFの7,000~8,000キロカロリーよりも低く、生ごみという有機物を含むために発酵して発火の危険もあり、管理が難しい。

破砕された可燃ごみは、乾燥機で乾燥する。水分を飛ばすのに大量の灯油が必要で、コスト高の要因になっている
杉本裕明氏撮影 転載禁止

2003年に三重県で、県のRDFの発電施設に敷設した貯蔵サイロが火災、爆発事故を起こし、消防士2人が亡くなった。RDFは、焼却発電施設の燃料にする計画が各地で進められたが、発電コストが高く、採算が合わず、三重県では2019年に廃止、他の発電施設も数年のうちに閉鎖が決まっている。

製造している自治体は、2015年時点での環境省の調査で52の製造施設があったが、その後三重県の市町の大量離脱などで、大幅に減少している。やめた理由はいずれも、高コストのRDFを製造しても、大半が燃料として売却できず、廃棄物として処理せざるをえなくなっていることだ。

カロリーが低く、有機物を含み管理が大変なこともあるが、塩素を含むことが、ボイラーを使う業界から嫌われる主要な原因になっている。 もう少し、詳しく説明しよう。

塩素混じったRDFは嫌われ者

家庭ごみには、使い捨てのおむつや生理用品、ラップ類など塩素を大量に含む塩化ビニル製品がある。生ごみに含まれる塩にも塩素がある。この塩素がボイラーを腐食させるとして工場から嫌われる。

現在、有価で販売している自治体はごく少数と言われる。せっかくお金をかけて造ったRDFを、民間の処理業者に処理費を払って燃やしてもらっている自治体が多数にのぼるという。

こうしたことから、RDFをやめて、昔の通り、焼却施設で燃やす処理方法に戻す自治体が相次いでいる。ただ、気にかかるのは、プラスチックのリサイクルを進める最近の国の方針と相違することだ。

政府は、一昨年、プラスチック資源循環促進法を制定し、自治体に対し、従来の容器包装ごみに加え、製品プラスチックごみも分別回収とリサイクルを求めた。また、RPFのように燃料として利用することも勧めている。

最近、RDFの製造中止を決めた幾つかの自治体の例を見よう。

群馬県みなかみ町は2022年11月で製造中止

みなかみ町は、昨年11月末でRDFの製造を停止することを決めた。これまで町の奥利根アメニティパークに設置した製造施設でRDFを製造していた。

町では、「奥利根アメニティパーク」の発電燃料に使っていたが、2006年に発電設備が故障し、使用不可となり、有価物として売却処分を経て、2017年から家庭ごみとして処理業者に焼却処分してもらい、その費用は年間1億円にもなっていた。

さらに2021年からは一部のRDFを群馬県片品村と沼田市の運営する尾瀬クリーンセンターに処理費を払い、焼却してもらっていた。RDFの製造量は2020年度、2,228トンあり、製造と委託費用に約2億8,200万円かかっている。

みなかみ町がRDFの製造を始めたのは1998年のことだ。これは、当時のごみ処理を所管する厚生省が、幾つかの自治体が連合で大きな焼却施設を設置、運営する広域化計画を打ち出したことによる。

国が進めたRDF化に乗った町

旧厚生省は1997年全国都道府県に通知を出し、小さな町が単独で小さな焼却施設を設置する場合には補助金を出さない。かわりにRDFの製造施設を設置するなら、従来通り補助金を出すとした。当時は焼却炉から排出されるダイオキシン汚染が大きな社会問題となり、国は炉からの排出を規制。全国の自治体は、大改修か建て替えないと、基準をクリアできなくなった。RDFは、ごみ焼却炉にも頼らなくてすむ代替策でもあった。 そこで、ごみ処理に困った多くの市町村が、焼却を断念しRDF化を進めた。みなかみ町もその1つである。

しかし、みなかみ町など利根沼田地域の5市町村が、ごみ焼却施設を新たに造り、広域で処理する計画をつくったため、町はRDFの製造中止を決めた。新焼却施設が完成するまでの当面は、可燃ごみを尾瀬クリーンセンターや他の一部事務組合の焼却施設で処理してもらうことを検討しているという。

RDFの製造の中止を決めるまでには、継続しようとする試みもあった。町営の温泉施設の燃料に使うため、町は、民間の熱供給会社と協定を結び、RDFを燃料として使えるか実証実験を行う施設を造らせた。

しかし、町が可燃ごみとしてRDFを処理していたことから、県がクレームをつけた。「有価物の燃料と認められない」と、業者の施設設置の届け出を受理しなかった。

政府の従来の見解は、売却できず、処理費を払って処分している場合は、廃棄物と見なす。このため、廃棄物と見なされたRDFは、温泉施設に持ち込むことはできないのだ。

「もの」の性状に関係なく、有価で販売できれば廃棄物でなくなり、お金を払って処理してもらえば廃棄物になるという、いまの日本の廃棄物の制度の矛盾をあらわした出来事だった。

三重県南部の5市町が焼却選択

三重県尾鷲市、熊野市、紀北町、御浜町、紀宝町の5市町で構成する「東紀州環境施設組合」の検討委員会は、この7月、新たに尾鷲市に設置する焼却施設の規模を日量64トン(32トン炉が2炉)とし、全連続焼却方式(ストーカ式・発電なし)とする基本計画案をまとめた。

人口7万1,000人を擁する5市町の可燃ごみは、海の近くの尾鷲市営野球場の敷地に建設し、事業費は174億3,000万円。内訳は、建設費79億5,000万円、20年間の運営・維持管理費94億8,000万円。2028年の供用開始を目指す。

この5市町のうち、紀北町、御浜町、紀宝町は、かつて三重県が打ち出したRDFによる広域化計画に乗り、2002年から各市町でRDFを製造、桑名市に県が設置したRDFの焼却・発電施設に持ち込んでいた。

しかし、当初の県の「燃料として買い上げる」との約束は反故(ほご)にされ、受け入れ料金を払うことになった。さらに発電施設の巨額赤字を理由に、毎年のように料金の値上げが行われ、それに不満を持った松坂市など有力自治体が次々と脱退、焼却処理に転換していった。

県も発電施設の巨額赤字に打つ手がなく、2019年に廃止した。残された市町は、民間の産廃会社の焼却施設に処理費を払いながら、RDFを製造している。発電施設があり、名目発電のための燃料扱いだが、実際には産廃会社に処理費を払っており、一般廃棄物扱いである。

5市町の製造と処理費用を比べると、人口が1万6,000人の紀北町の場合、中間処理費は年間5億2,000万円にのぼり、人口がほぼ同じで市単独の焼却炉を持つ尾鷲市の1億8,000万円と比べ、3倍近く高い。

集めて燃やすだけの新施設に批判の声も

前処理切断機で、搬入された可燃ごみを破砕・切断する
杉本裕明氏撮影 転載禁止

紀北町には、旧紀伊長島町と旧海山町の2カ所にRDF製造施設があり、合わせて約6,300トンのRDFが製造されてきた。筆者は昨年の夏、紀北町の旧紀伊長島町リサイクルセンター(樋口淳也所長)を見学した。職員の案内で工場内に入る。ごみ収集車がピットに可燃ゴミを放り込んでいる。ピットの中を見ると、生ごみ、プラスチックごみ、紙屑、繊維屑など様々な可燃ゴミが混じり合っている。

RDFの成形機。ここから、円筒形の固形燃料が裁断されて出てくる

それをごみクレーンでごみホッパーへ投入し、2基の破砕機に連続してかけ、計量コンベヤを通じて乾燥機に送る。そこで灯油を炊いて80%を占める水分を減らす。乾燥した可燃ごみは、揺動式分別装置と風力選別機、鉄・アルミ選別機を通し、RDFの原料になるものから金属などの異物を取り除く。さらに破砕し、圧縮成形機へ。冷却器で冷やし、RDF貯蔵サイロに貯めるという流れだ。

思ったようなRDFができあがりつあるが、状態を点検する職員

できたてほやほやのRDFを見せてもらった。直径3センチ、長さ10センチほどの筒状だ。「まだ熱いですよ」。職員が温度を測ると95度あった。

できたばかりのRDF。測ると95度あった

焼却施設建設の計画は固まったが

せっかく製造したRDFを廃棄物の焼却施設に持ち込んで燃やしていたのでは、集めた可燃ごみをそこへ持ち込むのと何ら変わらない。このままでは二重のごみ処理負担となり、今回のRDFから焼却への転換は仕方がなかったのかもしれない。しかし、新焼却施設の建設には、専門家や住民から、次のような疑問の声が出ている。

「新しい焼却施設の建設費はトン当たり1億2,400万円もする。しかも発電施設がない単純焼却。全国平均は発電施設を入れて8,000~9,000万円だから高すぎる。それに5市町は南北に70キロもあり、各自治体がそれぞれ処理していたのと違い、ごみ収集コストは跳ね上がる」

8月、尾鷲市内の50人の住民が集まった住民説明会では、住民から疑問の声が出た。運営を担う東紀州環境施設組合はこう説明する。

「この地域は将来、人口が大幅に減少することが見込まれ、お金をかけて発電施設をつけてもそれに見合うごみ量が確保できるか疑問があり、外した。熱回収率は10%を確保し、国の交付金をもらえるようにしたい。価格については、入札を行えば、この金額より安くなるとも考えられるが、建設費の上昇も考えられ、高いかどうか、判断できない。この計画案は、委員会がまとめたもので、年度内に組合として正式決定したい」

RDFの製造によって、紀北町のリサイクル率(2020年度)は60.8%、御浜町は59.4%、紀宝町は60.8%と、三重県の平均の20.4%の3倍の高率だ。 一方、RDFを離脱し、焼却に回帰した松坂市は10.9%、桑名市は14.4%とはるかに低い。いずれ紀北町などRDFを製造していた町もこの後を追うことになる。

リサイクルに寄与するプラス面を持つ固形燃料化を生かす道はないか、と探した。調べてみると、北海道と香川県にあった。次回は、この2つの事例を見たい。

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