ジブリの自然や環境問題を題材にしたアニメ6作品を紹介

ジブリの自然や環境問題を題材にしたアニメ6作品を紹介
© 1988 Studio Ghibli

日本はアニメ大国と言われ、数々の作品が私たちを感動させてくれます。 その中でも、知名度やクオリティが高く、国内外から評価される作品が、スタジオジブリのアニメではないでしょうか。 スタジオジブリの作品は、壮大なSFファンタジーやノスタルジックな時代を題材にしたものまで、幅広いジャンルを取り扱っていますが、環境問題や自然について考えさせられるものも少なくありません。

今回はスタジオジブリの環境問題や自然について考えさせてくれる作品をご紹介します。

環境問題や自然の大切さを教えてくれるジブリアニメ

今回紹介する作品は以下の6作品です。

  • 風の谷のナウシカ
  • もののけ姫
  • 天空の城ラピュタ
  • となりのトトロ
  • 平成狸合戦ぽんぽこ
  • On Your Mark

見たことある作品も、そうでない作品も、どのように環境問題や自然について言及されているのか、考え直すきっかけとしてこの記事を読んでいただければと思います。

風の谷のナウシカ

© 1984 Studio Ghibli・H

1984年に公開された長編アニメーション映画、風の谷のナウシカ。 2020年の時点で19回もテレビ放送が行われているため、その名を知らない人の方が珍しいかもしれません。 また、厳密に言うとスタジオジブリではなく、その前身とも言えるトップクラフトによって制作された作品ですが、宮崎駿監督による作品であるため、ジブリ作品としてカウントして問題ないでしょう。

風の谷のナウシカの舞台は「火の七日間」と呼ばれる最終戦争が起こってから1000年後の世界。 激しい戦争によって巨大な産業文明が崩壊し、荒廃した世界は「腐海(ふかい)」と呼ばれる、森に覆われつつあります。 この腐海は人体に猛毒のガス「瘴気」を吐き、これを吸ってしまうと5分で肺が腐ってしまうことから、人々はマスクなしでは生きられない、という世界です。

主人公のナウシカが暮らす「風の谷」は海から常に吹く風によって森の毒から守られていましたが、大国トルメキアの大型船が墜落したことで、環境が変化してしまいます。 さらに、トルメキアの皇女クシャナが軍隊を引き連れ、風の谷へ来襲。人々は腐海に生息する王蟲(オウム)の怒りを買うことになり、大きな争いに発展してしまうのでした。

ナウシカの設定は、環境問題を連想せずにはいられません。 自然をないがしろにして文明の発展を追い続けたことで、大気汚染や資源不足に悩む人々は、現実の世界で生きる私たちとほとんど同じではないでしょうか。 そして、腐海の存在は原発事故による放射能汚染を彷彿させ、王蟲は大地の怒りに例えられる自然災害を連想させます。 自然と共栄することの大切さ、利益を優先し続ける文明の危うさなど、風の谷のナウシカから学ぶことは多いのかもしれません。

ちなみに有名な話ではありますが、ナウシカは全7巻の原作漫画が存在します。 映画の内容は原作漫画の2巻前半部分までとなり、序盤でしかありません。 原作漫画では映画以上に濃密な内容で、さらに多くの問題が描かれています。 サブカル好きの本棚には「漫画版のナウシカとAKIRAが必ず置いてある」と言われているとかいないとか。

もののけ姫

© 1997 Studio Ghibli・ND

1997年に発表された長編アニメーション映画、もののけ姫は当時の日本映画の歴代興行収入第1位となった大ヒット作。 1999年1月に初めてテレビ放送された際は、関東地区で35.1%、西日本地区で40.8%の視聴率を記録したほど、多くの注目を集めました。

もののけ姫の舞台は、室町時代と思われる日本。 東と北の間にあると言われるエミシの村に住む主人公の少年アシタカは、村を襲ったタタリ神と呼ばれる怪物を退治した際、右腕に死の呪を受けてしまいます。 村の人たちは、怪物の正体が何者かに鉛のつぶてを撃ち込まれ、憎しみからタタリ神になった巨大な猪神だということを知り、呪いを受けてしまったアシタカを追放。 アシタカは呪いを解くため猪神が来た西の地へと旅立ちますが、その道中でシシ神の力なら腕の呪いを癒す可能性があると聞きます。

シシ神が住む「シシ神の森」を見つけるアシタカですが、山犬に育てられた少女のサン、タタラ場と呼ばれる村の長であるエボシと出会い、森を守ろうとする神々と繁栄のため森を切り開こうとする人々が争っていることを知ることに。 「森とタタラ場が共存する方法はないのか」とアシタカは問いかけますが、森と人々の戦いは激化してしまうのでした。

森林破壊を進めるエボシは悪役のようでもありますが、タタラ場で暮らす人々の生活を豊かにするため行動し、村の人々は彼女を心から慕っていることが描かれています。 今の世界も明日の生活のため、環境破壊もやむを得ないという人々は少なくありません。 美しい自然を食いつぶすことなく、すべての人間が豊かに暮らすすべはあるのか。 そんなことを考えさせる作品だと言えるでしょう。

天空の城ラピュタ

© 1986 Studio Ghibli

1986年に公開された天空の城ラピュタはスタジオジブリ初の長編アニメーション映画作品。こちらも宮崎駿監督の作品です。 テレビ放送は2022年の時点で18回も行われているため、ナウシカと同じく高い知名度を誇る作品だと言えます。

天空の城ラピュタの舞台は、19世紀後半、産業革命期のヨーロッパを元にした架空の世界。 主人公は、鉱山で働く見習い機械工の少年パズー。 彼はある夜、気絶した少女、シータが不思議な光に包まれ、空からゆっくりと落下してきたところを救出します。

しかし、二人はシータが身に付けている謎の鉱石「飛行石」を狙う海賊たちから追われることに。 そして、パズーとシータは飛行石をめぐる陰謀に巻き込まれ、空に浮かぶ伝説の城、ラピュタへいざなわれることになるのでした。

伝説の城ラピュタを築いた文明は、高度な技術を持ち、空中で生活していましたが、その科学力でも克服できない奇病が発生。結果、ラピュタ文明は滅亡し、生き残った人々は地上に降りて隠れるように生活することになった、という設定があります。 また、劇中でシータは「どんなに素晴らしい技術を持っていても、土から離れては生きられない」といった発言をします。 映画が公開された1986年はバブル絶頂期。 ラピュタのように自然と共栄することを忘れ、文明の進歩ばかり追い求める人々に対し、警鐘を鳴らすような作品だと言えるのではないでしょうか。

となりのトトロ

© 1988 Studio Ghibli

となりのトトロは1988年に公開されたスタジオジブリ制作の長編アニメーション映画。もちろん、宮崎駿監督の作品です。 こちらもテレビ放送が2022年の時点で18回と多く、「トトロを見たことない」というテーマの漫才ができてしまうほど、国民的なアニメ作品と言えるのではないでしょうか。

トトロの舞台は昭和30年代前半の日本。小学生のサツキ、幼い妹のメイ、お父さんの3人が、お母さんの入院する病院の近くで空気の綺麗な場所で暮らすため、農村に引っ越してくるシーンから始まります。 田舎の暮らしにすぐ馴染み、自然と触れ合うことに楽しみを感じる二人の姉妹ですが、メイが裏山で不思議な生き物「トトロ」と出会います。 大人には見えないトトロと不思議な体験を重ねる二人ですが、お母さんに会いに行こうと家出してしまったメイが行方不明に。 サツキはトトロに会ってメイを一緒に探してほしいとお願いするのですが……。

この作品の特徴は、自然の魅力が美しく描写されていることです。 サツキとメイという二人の姉妹が自然と触れ合うことで成長していく様子を描いた作品だと言えるでしょう。 また、作品のモチーフの多くは埼玉県所沢市であると言われ、市内では作品の魅力を感じられるスポットが数々あります。

平成狸合戦ぽんぽこ

© 1994 畑事務所・Studio Ghibli・NH

平成狸合戦ぽんぽこは、1994年にスタジオジブリが制作したアニメーション映画作品。こちらは「火垂るの墓」や「おもひでぽろぽろ」で有名な高畑勲監督の作品です。

舞台は昭和40年代の日本。多摩丘陵の里山に住むタヌキたちの物語です。 彼らは平和に暮らしていましたが、多摩ニュータウンの開発計画によって、山や森の破壊が進められ、危機感を持っていました。 そこで、多摩のタヌキたちは結集して総会を開くことに。 開発阻止のため、伝統的変化術である化学(ばけがく)の復興と、四国・佐渡に住まう名のある化けタヌキに助力を乞うことが決定します。 地蔵や稲荷神社の狐に化け、住民の信仰心に訴え、古典的なお化けにばけて、建設工事の阻止を目指しますが、あまり効果は得られず……。

抵抗運動を続ける中、タヌキたちは疲弊し、倒れてしまう仲間も出てきます。 開発工事が進み、行き場を失ったタヌキたちはどのような決断を下すのでしょうか。

平成狸合戦ぽんぽこも、人間の手によって失われる自然や動物たちの生活が描かれています。 多摩丘陵という1つの地域を見ただけでも、多くの自然が奪われ、悲劇が生まれている。 だとしたら、いつか人はすべての自然を奪ってしまうのでは、と考えてしまうような作品かもしれませんね。

On Your Mark

© 1995 Studio Ghibli

ジブリのアニメーションの中では、少し特殊な部類といえる作品が「On Your Mark(オン・ユア・マーク)」です。 これは、人気音楽ユニットであるCHAGE and ASKAの楽曲、On Your Markのプロモーション・フィルムとして、作られた短編アニメーション。 原作・脚本は宮崎駿監督が務め、6分48秒という短い時間でありながら、強いメッセージ性のある作品です。

物語の舞台は、オゾン層の破壊が進み太陽光は危険なものとなり、原子力事故によって大地は汚染され、人類は地下に住むようになった未来。 主人公である二人の警官は、宗教集団施設から翼の生えた少女を救出し、空へ帰そうと奮闘する、というストーリーです。

短いあらすじの中からも、環境問題を意識させるメッセージが含まれていると、よくわかるものとなっています。 そして、物語のラストはちょっと悲しくなるようなシーンで終わることも、On Your Markが人々に語り続けられる理由の1つだと言えるでしょう。

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ジブリアニメを見て環境問題や自然について考えてみよう

このように、スタジオジブリは多くの作品の中で、環境問題や自然について考え直させてくれるような内容が含まれています。 ぜひ、次に見るときはどのようなメッセージ性があるのか、汲み取るような気持ちで挑んでみてください。 また、自然や環境問題をフォーカスしたアニメはスタジオジブリの作品だけではありません。 意外に深いテーマ性を持った作品は数多く存在しているため、アニメが好きな人はもちろん、そうでない方も、ぜひ空いた時間に見てみてください。

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