オーバーリズムはなぜ起こる?原因や各地の事例・対策を紹介
観光地は地域を活性化させ、そこに住む人たちの経済を支える効果があります。 そのため、観光客を増やすために仕掛けを考える地域も少なくありませんが、賑わいすぎると問題に発展することも……。 今回は、人の増加などが原因で発生する観光地の問題、オーバーツーリズムの原因や事例を紹介します。
目次
オーバーツーリズムとは?観光公害が問題に
オーバーツーリズム(overtourism)とは「over(許容範囲を超える)」と「tourism(ツーリズム)」を組み合わせた造語で、2016年ごろからアメリカで使われ始めました。 意味としては、観光客が著しく増加してしまい、地域住民の生活環境、自然環境に弊害が出てしまう現象で、日本では「観光公害」とも言われます。
オーバーツーリズムは、観光客の満足度を低下させ、景観を崩してしまうこともあるため、観光地としての魅力が戻らず、大きな損失につながる問題です。 オーバーツーリズムの具体例としては、以下のような状況が挙げられます。
- 交通機関やトイレといった公共機関・施設の混雑
- 観光客のごみポイ捨てによる自然環境の破壊
- 観光客による騒音や治安の悪化
- 立入禁止区域で行われる撮影
- これらが原因による観光客と住民のトラブル
昨今、日本でも円安の影響やビザ取得の規制緩和によって、観光客が増加し、こういったオーバーツーリズムの問題が注目されています。 2024年に話題になったオーバーツーリズムとしては、山梨県富士河口湖町にあるローソンの屋根越しに富士山が見えるとして、向かいの歩道に外国人観光客が写真撮影のために殺到し、危険行為やマナー違反が見られた件が有名です。
外国人観光客だけでなく、日本人によるオーバーツーリズムも発生するため、観光地に訪れる際は注意が必要と言えるでしょう。
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オーバーツーリズムの原因は?
オーバーツーリズムは複雑な事情が絡み合い、原因を特定することは難しい問題です。 しかし、大まかな原因としては以下のような事情が関係していると考えられます。
交通や宿泊の選択肢が増えた
まず、交通手段や宿泊の方法が変化し、観光客が増えたことが オーバーツーリズムの原因として挙げられるでしょう。 格安航空会社やインターネットによる利便性の高い予約システムの普及は、それまでよりも旅行を気軽なものにしました。 航空路線の拡大、交通インフラの整備が改善されたことも、観光客の増加につながっています。
さらに、旅行中の滞在先がホテルだけでなく、民泊サービスという選択肢が増えたことも関係していると考えられます。 民泊サービスはホテルよりも低価格で宿泊が可能です。 これらが関係して、気軽に旅行の予定も立てやすくなったと言えるのではないでしょうか。
中間層や富裕層の増加
近年、アジアを中心に経済が急成長した国々が増えています。 そのため、中間層や富裕層と言える人々も増加。 余暇に旅行を楽しむ人が増えました。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いたことで、人々の観光頻度が増えたとも考えられます。
SNSの普及
現代はSNSが普及したことで、個人の発言がトレンドを作り出すこともあります。
そのため、気軽に情報がシェアされ、魅力的な写真と口コミが広がってしまうと、観光客の受け入れ態勢が整っていないような場所に、人が集中してしまうケースも。 SNSがきっかけで、オーバーツーリズムに発展するのも現代ならではの問題かもしれません。
オーバーツーリズムの事例!各地で問題に
オーバーツーリズムの問題は世界各地で発生しています。 どのような地域で、何が問題になっているのか。オーバーツーリズムの事例をご紹介します。
京都
外国人観光客からも人気がある京都市では、バスやタクシーの乗り場に長蛇の列が作られ、地元住民の利用に弊害が出ています。 京都市では、1995年から都心部のバスが700円で乗り放題になる乗車券を販売していましたが、オーバーツーリズムの対策として2023年の9月にこれを廃止。 地下鉄の利用を促し、混雑の緩和を目指しています。
また、バスの混雑だけでなく、串系の食べ歩きによるポイ捨ても問題に。 ごみ箱の設置を増やすも回収が追い付かず、景観が損なわれるといった懸念点もありました。
その対策の1つとして、2023年9月 から嵐山の「竹林の小径」にスマートごみ箱を設置。 こちらは投入量が増えると内部センサーが感知し、ごみを500キロ以上の圧力で圧縮するという仕組みで、120リットルの容量に対し、5倍の量を収容できることから、環境の改善につながると期待されています。
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宮古島
沖縄県の宮古島市は2015年から5年間で観光客が倍増。 経済的な基盤を支える重要な産業となりましたが、その一方でオーバーツーリズムが顕在化してしまいました。
具体的な影響としては、ごみ増加による自然環境の悪化、レンタカーによる事故の増加、住宅やホテル建設に伴う建設費や家賃の高騰など。 これに対し、宮古島観光協会は観光戦略委員会を立ち上げ、島の魅力を高めつつ、観光客向けのガイドラインを整備。 さらには、質の高い観光体験を提供するため、環境保護の取り組みも進めました。
江ノ島電鉄の踏切
神奈川県鎌倉市にある江ノ島電鉄の「鎌倉高校前1号踏切」もオーバーツーリズムが話題となった観光スポットです。 踏切の先に相模湾が見える景色は、観光地として美しいものでしたが、多くの人に注目されたきっかけがあります。
それは人気漫画のSLAM DUNKがアニメ化されたとき、オープニングにこちらの踏切が登場したこと。 さらに、2022年に映画「THE FIRST SLAM DUNK」がアジア諸国で順次公開されると、一気に観光客が増加しました。
写真を撮ろうとする観光客によって車が進めなくなる、ごみが放置される、近隣住宅に侵入されるなど。 この問題を解決するため、江ノ電と自治体による対策が期待されています。
ベネチア
ベネチアは「水の都」と呼ばれ、世界的に有名な観光地です。 そのため、運河がごみで汚れる、クルーズ船によって生み出される波が街の地盤を傷める、家賃高騰と公共サービスの低下といった事態が発生し、地元を離れてしまう住民が続出してしまいました。
これらを防ぐため、2024年4月から日帰りの観光客に対して、5ユーロ(約860円)の入場料を徴収するという対策を試験的に開始。 しかし、人の流れは例年と同様だったため、入場料を値上げするなど新たな措置が検討されています。
バルセロナ
スペインで最も観光客が多い都市、バルセロナもオーバーツーリズムに悩まされています。
1992年、オリンピック開催を機にバルセロナは観光都市として発展するため、必要なインフラ整備を行ったところ、多くの観光客が訪れるようになりました。 結果、バルセロナの年間観顧客数は3,200万人に達し、それは同市の人口160万人の約20倍という異常な数字に。
最初こそ、万勝を持つ市民は「ホテルより安く泊まれる」とアピールして民泊を始めましたが、素行の悪い観光客が目立つようになり、住民の不満が溜まってしまうという結果となりました。 さらに宿泊用の満床が増える一方で、一般市民のマンションが不足してしまい、賃貸料が上昇。賃料を23%も引き上げるマンションも現れます。
そんな中、2024年の7月6日にはオーバーツーリズムに抗議する150人以上がデモ行進する事態に発展。 観光客に水鉄砲を向け「帰れ!」と訴えるデモ参加者の姿も話題となりました。
バルセロナは民泊の全面禁止など対策を講じていますが、2024年10月から観光税を大幅に引き上げ、問題の解決を目指しています。
ウユニ塩湖
世界的な絶景スポットとして知られるボリビアのウユニ塩湖は、平らな地面に水が溜まり、その表面が水鏡のように周辺の景色を映し出すことから「天空の鏡」と呼ばれる神秘的な場所です。 しかし、こちらも多く訪れる観光客によってごみ問題が深刻となっています。
ごみのポイ捨てだけでなく、観光車両のタイヤについた泥によって塩湖の土壌が茶色く変化。 このままでは絶景が損なわれてしまうのでは、と懸念されています。
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まるで天国のような景色が広がっていることで話題になったウユニ塩湖。 多くの人がその景色に憧れ、
まるで天国のような景色が広がっていること
オーバーツーリズムを解消するには?
このようなオーバーツーリズムの問題は、どのように対策すべきなのでしょうか。 いくつか方法は考えられますが、以下のような対策が挙げられています。
- 多言語やピクトグラムによる啓蒙
- 観光客受け入れの整備
- 入域料の導入
また、日ごろからごみや環境に対して意識することも、対策の1つです。 どれだけ環境問題が深刻なのか。どうすればごみを削減できるのか。 それを意識するだけでも、オーバーツーリズムが軽減される可能性があるでしょう。
エコトピアでもそのような情報を発信していますので、ぜひチェックしてみてください。
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