流域治水とは?従来の治水との違いや取り組みの具体例をわかりやすく解説

流域治水とは?従来の治水との違いや取り組みの具体例をわかりやすく解説

ここ数年で大型台風や集中豪雨による水害が多発していますが、大きな被害を避けるためにどのような取り組みがあるのでしょうか。 水害を最小限に抑える防災の取り組みとして、流域治水が注目されています。

流域に関わるすべての人によって水害を最小限に抑える流域治水。 その概要や具体的な取り組み、私たちの暮らしにどのような影響があるのか、詳しく解説します。

流域治水とは?総合力を活かした防災対策

流域治水とは、河川の管理者(国や自治体)だけでなく、企業・農家・住民を含めた流域に関わる全員で雨水を止め、水害を最小限に抑える新しい防災の取り組みです。 概要や必要とされる理由などを見てみましょう。

流域とは?

流域とは、降った雨や雪解け水が地形によって同じ川・海などの水域へ集まる大地の範囲全体のことです。 日本列島は山から海までの距離が短く、どこの地域に住んでいても、必ずどこかの「川の流域」の中で暮らしています。

例えば、東京には荒川流域や多摩川流域などがあります。 荒川流域なら足立区、北区、板橋区、葛飾区、江戸川区など。 多摩川流域なら八王子市、立川市、府中市、調布市、世田谷区、大田区が含まれます。

なぜ流域治水が必要とされるのか

これまでの水害対策は、国土交通省や自治体などの「河川管理者」が中心となって「川の堤防を高くする」「川の底を掘って深くする」「ダムを造る」といった手法が主流でした。 しかし、近年の気候変動に伴う線状降水帯や超大型台風は、従来の堤防が耐えられる想定を超える豪雨をもたらします。

そこで、川の管理者だけに任せるのではなく、行政・企業・農家・住民といった流域で生活する全員が一致団結し、協力して水害対策に取り組もうという考えが生まれたのです。

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従来の「治水」と「流域治水」の違い

従来の「治水」と「流域治水」がどのような違いを整理すると、以下の通りになります。

比較対象 対策の主な場所 対策の主体 主な対策内容 狙い
従来の治水 川の中(河川敷・堤防) 国や自治体(河川管理者)のみ 堤防を高くする、川の底を掘る 川から水を溢れさせない
流域治水 川+その周辺の街・山・田んぼ(流域全体) 行政・企業・農家・住民全員 雨水を街に溜める、遊水地に逃がす、安全な場所へ住み替える 洪水が起きても「被害を最小限に抑える(減災)」
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流域治水の「3つの柱」と具体例

流域治水は、社会全体で水害対策に取り組むため、複数のアプローチで構成されます。 その中でも3つの柱と言える取り組みが以下の通りです。

  • 氾濫をできるだけ防ぐ・減らす
  • 被害対象を減少させる
  • 被害を軽減し、早期回復を図る

それぞれの特徴を見てみましょう。

氾濫をできるだけ防ぐ・減らす

大雨によって水が一気に川へ流れ込むと堤防が決壊します。 しかし、川に入る手前の山や農地、街といった場所で雨水をできるだけキャッチ。川へ流出する速度を遅らせる対策を行います。

例えば、田んぼダムの活用です。 田んぼダムは、田んぼの排水口に小さな穴が開いた板を設置し、大雨時に水田を一時的な貯水池として活用。雨水をゆっくり時間をかけて川へ流すことで、下流の街の氾濫を防ぎます。

また、雨水貯留施設の整備も効果的と考えられています。 例えば、学校の校庭、公園の地下、大型商業施設やマンションの敷地内に巨大な雨水貯留槽を設置。 雨水を街の中で一時的に引き止め、川のパンクを防ぐという手法です。

さらには、荒れた森林を整備することで、山に降った雨を土の中に染み込ませ、洪水と崖崩れの両方を防ぐといった取り組みも重要視されています。

被害対象を減少させる

どれだけ対策を行っても、想定を超える超大型台風などによって川が溢れてしまうことは否定できません。 そのため、水害が起こりそうな危険な場所に人や重要施設を置かない、水が溢れても問題ないエリアを作っておく、といった街づくりも進んでいます。

具体的には、ハザードマップで深刻な浸水リスクが懸念されるエリアは新規開発を規制する、高台や浸水リスクの低いエリアへ居住や都市機能を移転・誘導など。 他にも、河川の近くにあえて緑地公園やスポーツ広場をつくり、増水したときに水を安全に引き込んで貯める遊水地として利用するといった取り組みも考えられています。

平時は市民の憩いの場として使い、大雨時には浸水させて街を守るグリーンインフラの活用例と言えるでしょう。

被害を軽減し、早期回復を図る

もし、街が浸水してしまっても、被害を最小限にとどめて命を守り、速やかに元の生活に戻れるような備えも大切です。 住宅やビルの1階部分を駐車場にするピロティ構造、電気設備を浸水しない屋上や上層階へ配置するなどは、浸水時の停電、機能停止を防ぎます。

また、台風の接近や豪雨が予想される「数日前~数時間前」に、行政・企業・住民が「いつ・誰が・どこへ避難するか」を時系列で定めた「タイムライン」の作成と運用。 高所への「垂直避難」や、浸水前の早期立ち退き避難を徹底することも、被害の軽減につながります。

参考:国土交通省 タイムライン

流域治水による暮らしや住まいへの影響

流域治水は行政による巨大なインフラ工事ではなく、流域に暮らす私たちも関係する取り組みです。 具体的には、資産価値・マイホームの建築・防災意識に大きく影響します。

住まい選びと資産価値に影響

不動産業者による不動産取引時の水害ハザードマップを用いた浸水リスクの説明が、2020年8月より重要事項説明の必須項目として義務化されました。 住まい選びの際は、浸水のリスクを今まで以上に意識する必要があるでしょう。

そのため、氾濫平野や低地エリアのリスクが可視化され、水害リスクの低い高台、安全対策が整った地域の需要が高まりますが、ハザードエリア内の物件は将来的な資産価値の下落、火災・水害保険料の負担増といった影響を受けやすくなってしまいます。

マイホームや建築に影響

個人で家を建てる、リフォームする際も、流域治水の考え方を考慮した構造や設備選びも重要です。 マイホームの建築は、ピロティ構造や基礎を高くして床上浸水を防ぐ設計を意識し、給湯器、エアコンの室外機、受変電設備が浸水で壊れることがないよう、高所に配置する住宅が増えています。

他にも「雨水貯留タンク」の設置や、雨水を地中にゆっくり浸透させる「雨水浸透桝(うすいしんとうます)」の導入など、水害に強い家づくりが一般的になりつつあるのです。

防災意識に影響

流域治水は施設の対策だけでなく、そこに暮らすひとりひとりの行動の変容も必要となります。 例えば、タイムラインの活用ですが、行政が用意したものをチェックするだけでは不十分です。 台風や集中豪雨が近づいたとき、いつ・どこへ・どうやって避難するか、家族であらかじめ決めておく「マイ・ライムライン」も推奨されています。 さらには、地域の避難訓練に参加すること、近隣の要支援者(高齢者や子供など)の早期避難を助け合う意識が強まっています。

みんなで「水害に強い街」を作る時代へ

昨今、多発する大型台風や集中豪雨は、流域治水のような意識の変化が必要なほど、大変な水害をもたらします。 そんな大型台風や集中豪雨の発生は、気候変動が大きく影響していると考えられています。 そして、気候変動は私たちの生活によって排出される温室効果ガスが大きな原因だという話は有名です。 だとしたら、大型台風や集中豪雨の発生を少しでも抑えるため、温室効果ガスの排出を削減しなければなりません。

個人で取り組める温室効果ガスの削減は、リサイクルやリユースが身近なものです。 リサイクルはごみを再資源化することで、廃棄物の焼却や新規製品の製造を避けられ、温室効果ガスの削減につながります。 ごみの分別を徹底するだけで、リサイクルを促進できるため、日常的に意識してみてください。

そして、再利用を意味するリユースは、リサイクルよりも温室効果ガスを削減する行動と言われています。 なぜなら、リサイクルは再資源化の処理に温室効果ガスを発生させてしまいますが、モノをそのまま再利用するリユースには、そういった心配がないからです。 マイボトルやエコバックを利用する他にも、中古品を選択するという行動もリユースとなります。 大型台風や集中豪雨の発生がさらに増えないよう、日常の中でリユースを選択できるシーンがないか、ぜひ意識してみてください。

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