自然共生型社会とは?注目の理由と具体的な取り組みを解説
地球の限られた資源を利用しながらも、私たち人間が社会を存続するためには、さまざまな工夫や配慮が必要となります。 その中でも、注目されている在り方が、自然共生社会の構築です。
自然共存社会とは、どのような社会を指すのでしょうか。 自然共存社会の意味や注目されるようになった理由・経緯を解説します。
目次
自然共生型社会とは?注目される理由と経緯
自然共生型社会とは、人と自然が調和しながら共存する社会のことです。 人間の生活は自然の恵みによって支えられています。しかし、私たちの活動が環境破壊につながり、ときには必要以上に自然が失われていることも否定できません。
そのため、これからは人間の活動が自然の回復力を超えることなく、生態系の健全性が損なわれない社会を構築する必要があります。 そんな考えが自然共生社会となりますが、注目されるようになった理由と経緯を確認してみましょう。
生物多様性条約
生物多様性条約(CBD)は、地球の豊かな自然を守るため、1992年に採択された国際条約です。 この条約が作られる以前も「ラムサール条約」や「ワシントン条約」といった自然保護の条約はありましたが、あくまで特定の場所や種を守る限定的なものでしかありませんでした。
しかし、1980年代に入ると世界各地で生物が急速に減少し、生態系が崩壊しつつあるという危機感が強まります。 そこで、生物多様性条約が以下を柱として作られました。
- 生物多様性の保全
- 生物資源の持続可能な利用
- 遺伝資源の利用から生じる利益の公正な配分
生物多様性条約の誕生から「人間と自然の共生」というフレーズが使われるようになります。
21世紀環境立国戦略
21世紀環境立国戦略とは、2007年6月に日本で閣議決定された、環境政策基本方針です。 地球温暖化の危機、資源の浪費による危機、生態系の危機といった課題に対し、日本が持つ環境技術や伝統的な知恵を活かす戦略であり、持続可能な社会を目指すためには以下の実現が必要だと提示しました。
- 低炭素社会
- 循環型社会
- 自然共生社会
これにより具体的に何をすべきか、重要項目が挙げられ、自然共生社会が日本の環境戦略の柱として掲げられたタイミングとなりました。
SATOYAMAイニシアティブ
SATOYAMAイニシアティブとは、2010年に名古屋で開催されたCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)で提唱された、国際的な取り組みです。 日本では燃料や食料の供給源として、人の手で管理・利用されてきた自然環境を里山と言い、豊かな生態系を維持している場所としても知られています。
急速に進んでいる生物多様性の損失を止めるためには、原生的な自然を保護するだけでなく、世界各地に存在する里山のような二次的自然地域で自然資源の持続可能な利用を実現することも必要である、という考えから、日本環境省と国連大学がSATOYAMAイニシアティブを提唱。 具体的には、日本が長年培ってきた里山の管理手法をモデルに、以下の3つのアプローチを軸とした活動を展開しています。
- 自然の恵みの維持・強化
- 資源の持続可能な利用
- 地域社会と経済の活性化
この提唱によって、世界に向けて自然共生社会の重要性が発信されたと言えるでしょう。
自然共生型社会に関する国の取り組み
それでは、自然共生型社会を実現するため、国はどのような取り組みを行っているのか見てみましょう。
ネイチャーポジティブ
ネイチャーポジティブとは、日本語では「自然再興」と訳せます。 その意味としては「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる」ということ。 2021年に開催された、G7コーンウォール・サミットで日本は「2030年までにネイチャーポジティブのミッションを支持する」と宣言しています。
また、2023年に国内の最上位計画である「生物多様性国家戦略」を改定。 2030年までにネイチャーポジティブの実現を目指すと掲げるなど、前向きに取り組むことを宣言しています。
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自然は私たちに多くの恩恵をもたらします。空気や水だけでなく、あらゆるものが自然から取り出された資源に
自然は私たちに多くの恩恵をもたらします。
30by30目標
30by30(サーティ・バイ・サーティ)目標とは、2030年までに日本の陸と海の30%以上を保全するという国際公約です。 こちらは2030年までのネイチャーポジティブ実現に向けた目標の1つで、国立公園や鳥獣保護区などの保護地域の拡張と管理の質の向上、外来種の駆除、放置された人工林を広葉樹の森に戻すといった取り組みが行われています。
他にも、目標達成のためには官民の連携が必要であるため、巨大なネットワーク組織「30by30アライアンス」を発足。 さまざまな団体が参加し、30by30達成に向けた取り組みに関する、情報交換やベストプラクティスの共有が行われています。
参考:環境省 30by30
OECM
OECM(Other Effective area-based Conservation Measures)とは、国立公園のような「国が指定した保護区」だけでなく、民間の努力で守られている場所(企業の森、里山、社叢など)を保全地域として認める仕組みです。 日本では「自然共生サイト」として認定し、主に「生物多様性の価値」「適切な管理・保全活動」「明確な境界とガバナンス」という点から審査されます。 これに認定されると、国際的にOECMとして登録。30by30の達成に貢献できます。
参考:環境省 自然共生サイト
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自然共生型社会の課題とは
それでは、自然共生型社会の実現にあたり、どのような問題があるのでしょうか。
里山の荒廃
かつては、開発による自然破壊が問題視されていましたが、現在の日本では人間の手が入らなくなったことで里山の荒廃が深刻化しています。 人口減少や高齢化によって、二次的自然が消失してしまい、逆に生物多様性が失われているのです。
また、里山のような人と野生動物の境界線が消滅したことで、シカやイノシシによる農業被害が増加。 伝統的な知恵や技術を持つ人々が減少しているため、自然を管理するノウハウが失われつつあります。
経済的な価値
自然を回復させることがコストとされ、ビジネスとして自立が難しい点も自然共生型社会の課題と言えます。 森林による水の浄化、洪水を緩和するといった生態系サービスの価値は、現在の市場経済では価値がつきにくく、投資も集まりにくい現状です。 ネイチャーポジティブも効果が出るまで時間がかかり、短期間で利益が求められる企業経営や株主に理解を求めることも難しいと言えるでしょう。
科学的な評価
結果を数値化し、科学的な評価を提示することも自然共生型社会の実現において、難しい課題と言えます。 二酸化炭素の排出であれば「トン」といった単位で計測されますが、生物多様性は統一した数値による評価は難しいところです。
また、広大な森林や海域を調査し、科学的なデータを示すだけでも、多大なコストを必要とします。 再生可能エネルギー導入のために自然を伐採するといった、環境課題の衝突も見られ、これらをどのように調整するのか、といった点も注目されている課題の1つです。
自然共生型社会に向けて何ができるのか
自然共生型社会の実現は、人の暮らしが長く続くためにも達成しなければならない大きな課題です。 そのため、官民一体となって取り組みを進める必要がありますが、個人的に何ができるのか、という点も気になるところではないでしょうか。
身近なことで言えば、リサイクル・リユースの徹底が挙げられます。 リサイクルは資源を循環させること。日常的な例で言えば、ごみの分別です。ごみの分別を徹底することで、資源ごみなどは適切に処理されて再び循環し、限りある資源を無駄にしません。 リユースは再利用のことで、繰り返し使えるマイ箸やマイボトルを持ち歩くこともそうですが、使わなくなったモノをフリマアプリで売るといった行為も該当します。
自身では使わないと思ったモノも誰かにとっては、必要なモノかもしれません。 だとしたら、捨ててしまうよりはリユースによって再活用を心掛けたいところですよね。 そんなリユースはフリマアプリやオークションサイトなどに限らず、さまざまな選択肢が存在しています。 いらないモノが出たときは、ご自身にあったリユースの方法がないか、ぜひ考えてみてください。










