ジビエとは?持続可能性・メリットや注目の理由を解説
シカやイノシシのお肉が「ジビエ」と表現されますが、厳密にはどういう意味かご存じでしょうか。 また、食事にジビエを取り入れることは、メリットが存在します。 その代表例は温室効果ガスの削減です。
なぜ、ジビエを食べることが、そのようなメリットにつながるのでしょうか。 ジビエの定義やメリットについてご紹介します。
ジビエとは?定義と主な種類
まずはジビエの定義や種類から確認してみましょう。
ジビエの定義
ジビエとはフランス語で、狩猟によって捕獲した狩猟対象の野生の鳥獣、またはその肉を指します。 日本語で訳すと「野生鳥獣肉」となり、畜産の対比として使われる狩猟肉です。
ジビエは、ヨーロッパ貴族の間で伝統料理として古くから発展していた食文化で、フランス料理界では高級食材として愛され続けています。 野生の動物から得た天然の肉は、脂肪が少なく引き締まり、栄養価も高い、という点が特徴です。
ただ、完全な野生動物(フランス語でソヴァージュ)の肉は入手困難で高価であり、供給も安定しない側面もあります。 そのため、捕獲した後に餌付けしたり、飼育してから一定期間野に放ったり、そういった半野生(ドゥミ・ソヴァージュ)もジビエとする場合もあります。
代表的なジビエの種類
ジビエとして扱われる種類は以下のようなものがあります。
シカ
ジビエの代表と言える種類が鹿肉ではないでしょうか。 日本で獲れるシカはエゾシカとホンシュウジカの2種類。
エゾシカは北海道に生息し、体が大きくて脂がのっていることが特徴です。 ホンシュウシカは日本全国で見られますが、比較的に体が小さめ。
地域によって肉質は異なりますが、京丹後地域や石川は餌の質が良く、上質な鹿肉が獲れると言われています。
イノシシ
イノシシもジビエの代表と言える種類の1つ。 江戸時代は獣の肉を食べることは禁止されていましたが、猪肉を「山鯨(やまくじら)」として提供していた店もあった、と言われています。
猪肉は、脂身がたっぷりで、切り身の美しさから牡丹肉と呼ばれることも。 冬場はさらに脂が乗っていて、特に美味しいと言われています。
クマ
クマは脂の融点が低く、甘みがある肉として知られています。 日本にはヒグマやツキノワグマが生息していますが、獲るのは非常に難しいことから希少価値が高いという特徴も。 また、熊肉は体を温める効果や滋養効果が高いとも言われています。
さらに、コラーゲンが含有されていることから、美容に効果があると珍重されています。
カモ
日本では古くから鴨肉を食べる習慣があり、鴨南蛮そばのような料理があります。 冬場は脂が乗り、特に鴨肉が美味しくなる季節となります。
また、日本だけでなくフランス料理でも人気がある食材です。
ウズラ
鳥のジビエとして有名な種類がウズラです。 ウズラ肉は白身の肉で水分が多い、という特徴があります。 日本では個体数が少ないため、狩猟は禁止されていることから、手に入るウズラ肉は輸入物です。
ジビエによる持続可能性とは?意外なメリット
ジビエは持続可能性を高める効果があると、今まで以上に注目されています。 現在、日本は野生鳥獣が増えたことで、農林業や自然環境に影響が出ています。
具体的には、シカやイノシシが田畑を荒らす、高山植物の食害などです。 害獣が増えた原因としては、古くは生態系の頂点だったオオカミが絶滅したこと、人間が害獣を肉や毛皮として利用しなくなったこと、ハンターが減少して捕獲数が減ったこと、森林伐採や地球温暖化による暖冬などが挙げられます。
農林水産省によると、2021年の野生鳥獣による農作物の被害額は155億円です。 これを対策しなければ、害獣は活性化して被害が増え、農家の所得は減少。最終的には集落の崩壊につながります。
しかし、ジビエを積極的に利用することで、地域の持続可能性を高めるというメリットが生まれます。 まず、日本は食料自給率が低いことが問題となっていますが、ジビエを利用することで、その改善が期待できます。 さらに、農業被害悲願 を減らすと同時に、地方の雇用や経済の活性化に貢献できる可能性もあるのです。
参考:農林水産省 ジビエ利用の推進について
ジビエが環境問題を改善するメリットも?
さらに、ジビエの利用は環境問題を改善する可能性があります。 環境問題の中でも世界的に恐れられている地球温暖化現象ですが、その原因は温室効果ガスの排出が関係している、と言われています。
温室効果ガスの排出は、電気をつくるとき、自動車の排気ガスなどが有名ですが、畜産分野によるものも問題視されています。 畜産分野による温室効果ガスの排出とは、牛のゲップに含まれるメタンガス や、豚や鳥の飼育、肉を輸送する際に発生する二酸化炭素のことです。
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しかし、ジビエを積極的に利用することで、海外から肉を輸入する機会が減り、二酸化炭素の排出を抑えられます。 ただ、ジビエを食肉として利用するためには、いくつかの問題があります。
現状、シカやイノシシを捕獲できたとしても、すべてが食用に適しているわけではなく、9割近くは埋設・遺棄されてしまいます。 また、衛生管理の理由からジビエは捕獲から加工まで短時間で行う必要がありますが、食品衛生法による基準を満たした施設は全国で691施設(2020年時点)と決して多いわけではありません。
他にも、捕獲から販売までの工程が複雑であること、入手が困難であることから高価になりがちであることなど、ジビエが一般に広まりにくい原因はいくつも存在しています。
参考:農林水産省 ジビエ処理加工施設の数・分布等
ジビエという選択肢も考えてみる
ジビエの利用を推進するため、国はさまざまな取り組みを行っています。 流通するジビエの安全性向上、透明性の確保を図るため、2018年から「国産ジビエ認証制度」を制定。 他にも、捕獲者や処理加工施設の人材育成、ジビエプロモーション事業に力を入れています。
しかし、私たち消費者が注目しなければ、ジビエの利用は広まりません。 もし、ジビエを食べる機会があれば、ぜひ率先して選択してみてください。 それが持続可能性に貢献し、地球環境の改善につながる一歩になると思えば、とても魅力的なことではないでしょうか。
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