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サンシャイン水族館の「サンゴプロジェクト」とは?沖縄県恩納村の協力のもと、サンゴを殖やして海に還す活動

サンシャイン水族館の「サンゴプロジェクト」とは?沖縄県恩納村の協力のもと、サンゴを殖やして海に還す活動
サンシャイン水族館の見どころの1つ「サンシャインラグーン」大水槽は、擬サンゴの隙間を小さな魚たちが行き交い、大きなエイが翔ぶように泳ぐ巨大な水槽
©サンシャイン水族館

昨今、海洋における環境問題が注視されていますが、サンゴの減少もその1つです。 そんな中、日本を代表する水族館の1つ「サンシャイン水族館」は、サンゴを保全するプロジェクトに力を注いでいます。

サンシャイン水族館による、サンゴの保全「サンゴプロジェクト」は、どういった活動なのでしょうか。 スタッフの方々から、プロジェクトの活動内容やサンシャイン水族館の魅力ある展示についてお話を伺いました。

サンシャイン水族館の「サンゴプロジェクト」

――サンシャイン水族館では、サンゴ礁の減少を防ぐために「サンゴプロジェクト」という活動を続けているとお伺いしました。こちらは、どういった経緯で開始したのでしょうか。また、具体的な活動内容も教えてください。

サンゴプロジェクトは、サンシャイン水族館が2006年から取り組んでいるサンゴの保全活動です。1997年以降から大規模白化によるサンゴの減少が確認されており、水族館としてサンゴの危機的状況を発信し、この状況を食い止める一助になれないか、という想いから本プロジェクトがスタートしました。活動内容は「知る・感じる」「守る」「伝える」という3つの軸を中心としています。

1つ目の軸である「知る・感じる」は、サンゴ礁の生態系を再現した水槽「サンゴ礁の海」の展示となり、こちらを通してサンゴという生き物を知っていただき、素晴らしさを感じていただくことが、サンゴを守る第1歩(きっかけ)になると考えています。

サンゴプロジェクトを代表する水槽「サンゴ礁の海」
©サンシャイン水族館

次に「守る」では、沖縄県恩納村(おんなそん)の協力のもと「サンゴ返還プロジェクト」「サンゴ礁再生プロジェクト」を行っています。返還プロジェクトは、恩納村産サンゴを当館で飼育し、無性生殖で殖やした後に、恩納村の海に返還するというもの。再生プロジェクトは、有性生殖によるサンゴの増殖が目的です。

サンゴは水質や光(照明)、水流などに敏感であり、飼育が難しい生き物であるため、当館に搬入したすべてが順調に成長するわけではありませんが、日々試行錯誤をしながら飼育を行っています。

最後の「伝える」は、イベントや解説などを通じてサンゴ礁から得る恩恵、現状の危機的状況など、サンゴ保全の重要性や大切さなど多く方々に知っていただくための啓発活動です。

どの活動も、減少しているサンゴの回復のお手伝いができれば、という想いをこめて行っています。

サンゴ減少の原因は?白化現象と生態系に及ぼす影響

――そもそも、サンゴはなぜ減少してしまっているのでしょうか。また、サンゴの減少によって生態系にどういった影響があるのか教えてください。

サンゴの減少は、地球温暖化による海水温の上昇が大きく関係していると言われています。 海水温の上昇など環境変化は、サンゴにとって大きなストレスです。そして、サンゴはストレスを感じると、体内で共生している褐虫藻という植物プランクトンを放出してしまいます。

褐虫藻は活発に光合成を行う生物であり、サンゴは彼らが作り出したエネルギーに依存していますが、それを失ってしまうと白い骨格が透けて見える「白化現象」が生じ、次第に弱ってしまうのです。

サンゴの白化現象は地球温暖化が関係している
©サンシャイン水族館

台風などの影響で海が攪拌(かくはん)されるなど一時的に水温が下がることで、白化状態から回復することもありますが、高水温の状態が長期間継続すると、最悪の場合サンゴは死滅してしまいます。

また、サンゴ礁には小型魚やそれらを捕食する中型・大型魚といった魚類だけでなく、ヒトデ、エビ、ナマコなど多くの生き物が生息しています。 つまり、サンゴ礁は彼らにとって住み家や産卵、エサの場でもあるのです。 そんなサンゴ礁が減少してしまえば、住み家、産卵、エサの場などの機能が低下し、そこで暮らす魚たちも減少してしまうでしょう。

サンゴの他にも!サンシャイン水族館の魅力

――サンシャイン水族館がサンゴの他にも、魅力的な展示がたくさんあると思います。人気のある展示や、珍しい展示などを教えていただけないでしょうか。

人気の展示としては、都会のビル群を背景に、まるでペンギンが空を飛んでいるかのような錯覚を覚える水槽「天空のペンギン」です。 高層ビルなどが並ぶ空とペンギンを同時に見ることができる唯一無二の展示で、都会の中にありながら、非日常を感じられる空間となっています。

「天空のペンギン」は非日常的な空間を演出している
©サンシャイン水族館

こちらで展示されているケープペンギンは、自然界においてペンギンの中でも最も生息数を減らしている種になってしまいました。 遠く南アフリカで起きていることではありますが、私たちの日常生活の中でも、自然に優しく、彼らを守るためにできることがきっとあると思います。 いつまでもこのペンギンたちが地球上で私たちと一緒に生きていける環境を作っていきたいです。

珍しい生き物の展示としては「ゾウギンザメ」というギンザメの仲間が挙げられます。 ゾウギンザメはオーストラリア南部・ニュージーランドなどの限られた海域に生息するギンザメで、名前の由来となっている「ゾウ」のような大きな吻(ふん)が特徴です。

ゾウギンザメが見られる国内の水族館は非常に珍しい
©サンシャイン水族館

大きな胸ビレを使ってパタパタと泳ぐ姿も印象的ですが、国内の水族館では展示が少なく、生きている姿が見られるのはとても貴重と言えます。

他にも、タチウオの展示もおすすめです。 釣りや食卓で馴染みのあるタチウオですが、実は飼育がとても難しい魚で、こちらも水族館の展示は少なく、2025年1月現在、関東エリアでは当館のみとなります。

タチウオはデリケートで飼育が難しい生き物だが、飼育スタッフの細かなケアによって、展示が可能となっている
©サンシャイン水族館

タチウオには鱗がないため、他の魚と比較すると体が傷つきやすいデリケートな生き物ですが、釣り採集から展示に至るまで飼育スタッフの細かなケアにより、展示が可能となりました。 飼育スタッフが情熱を注いで飼育するタチウオの体はきらきらと銀色に輝き、非常に美しいので、ぜひ当館までその姿を見にきてください。

サンシャイン水族館で見て・感じよう!

――最後に、海を始めとする自然環境を守る大切さと、そのためには私たちが何を意識すべきか教えてください。

私たちの食べ物や使っている道具は、海を始めとする自然環境や、そこに住む生き物たちに由来します。 しかし、人間の活動が自然や生き物に影響を及ぼし、その数が減少しているという事実は否定できません。 貴重な恵みを与えてくれる自然を守るためにも、私たちは上手に付き合って行くための取り組みが必要です。

環境問題はスケールが大きく、あまり実感がわかないかもしれませんが、そのようなときこそ、ぜひ皆さんの近くに、どんな植物・動物が暮らしているのか探し、見て、調べてみてください。 自然が近くにあることを実感できれば、環境問題も身近に感じて、その生き物のために何ができるか考えられるかもしれません。 それが生き物を守る第一歩です。

そして、世界には、私たちの身の回りにいる生き物以上に、多種多様な生き物たちが存在し、彼らのこともこの地球に住む人間全員で守っていく必要があります。 サンシャイン水族館でも、日常生活を送っているだけでは見られない、私たちが守っていくべき生き物の世界が垣間見られますので、ぜひ当館で“いのち”の多様さを実感してください。

参考:サンシャイン水族館 サンゴプロジェクト

サンシャイン水族館では2025年1月17日~3月16日の期間にて深海生物に着目した館内催事を開催。“ヘンテコにはワケがある!?”をテーマに、ユニークな姿かたちをしている深海生物を展示しています。また解説を通じて深海生物の独特な生態も紹介。“ヘンテコ”には、見た目の不思議さだけでなく、過酷な深海を生き抜く術が詰まっています。深海の底知れぬ魅力を是非、ご堪能ください。
サンシャイン水族館 ゾクゾク深海生物2025~奇妙奇怪ヘンテコ深海生物~

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